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鎖麟嚢 第十三場 10


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  国家京劇院   張火丁  飾  薛湘灵


守貞  「そのかごの中の人はどんな様子でしたか」
湘灵  「かごの中の方は恨みがあったのでしょうか・・・
      彼女の泣き声は途切れることなく、
      何故あんなに泣くのか、可哀相に思いました」
守貞  「可哀相に思って、あなたはどうしましたか」
湘灵  「けれども私の手元には何もありませんでした」
守貞  「それから?」
湘灵  「そして思いついたのです。鎖麟嚢があると」
守貞  「あなたはその鎖麟嚢を彼女に送ったのですか」
湘灵  「はい」
守貞  「碧玉!」
碧玉  「はい」
守貞  「薛さんを上座に」
碧玉  「ええっ 奥様、どうかなさったんですか。
      奥様よりも薛さんを上座にだなんて」
守貞  「早くしなさい」
碧玉  「・・・さあ、どうぞこちらへ。たいしたご出世ですわね」

湘灵はわけも分らずに上座の真ん中の席に座らされる。

守貞  「薛さん、その鎖麟嚢の中には何が入っていたのですか」
湘灵  「光り輝く金や宝石。赤い珊瑚や翡翠。
      真珠の首飾りや髪飾り。
      お金に換えれば数年は暮らせるでしょう」

守貞  「ああ、やっぱり薛さんはあの時私に鎖麟嚢を下さったお嬢様・・・
      なんて嬉しいことでしょう
      碧玉!」
碧玉  「はい」
守貞  「薛さんにお着替えを。私の上等な着物を彼女に」
碧玉  「奥様!乳母に何を着せても構いませんが、
      これ以上着飾ってどうするんですか」
湘灵  「奥様、これは一体どういうことでしょうか」
守貞  「何も心配することはありません。
      さあ、着替えていらして」
碧玉  「さあさあ、早く行くわよ。
      薛さん、私あなたを尊敬するわよ。すっかり奥様を取り込んじゃったものねえ」

湘灵は戸惑いながらも碧玉について行く。


  続く



 





 
by xiao-mei | 2008-04-12 21:56 | 好戯 鎖麟嚢

京劇好きの自言自語


by xiao-mei
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